【第2回 (その2) 】電磁鋼板を用いたSHTチョークコイルのコアにギャップがある理由
ここでは問い合わせの多い、ギャップ付電磁鋼板コアを用いたSHTチョークコイル(TSM、DTS等:HP/OUR PRODUCT/製品一覧/チョークコイルを参照)と、ギャップの無い一般トロイダル状ダストコアを用いたチョークコイルの違いについて、<質問>と<回答>形式で複数回に分けて回答事例を示します。
・ダストコアとギャップ付電磁鋼板コア(SHT)の違い
1. ダストコアの製造方法と磁束密度差
一般にダストコアの飽和磁束密度が低い理由としては、磁性粉は主成分が鉄(または鉄合金系)なので飽和磁束密度は高いのですが、コアとしての磁性部分のコアに占める割合がギャップ付電磁鋼板コアに比べて少なく、磁性材部分の密度が低いことが要因です。
図12:ダストコアの製造方法ですが、粉砕工法や各種アトマイズ工法によって造られた鉄粉表面を被膜絶縁してから高圧プレス機と金型を用いてプレス成形します。一般に1cm2当たり圧力2.0GPa(注:重量で20t!)もの高圧で加圧するので、コア形状は応力を分散させて金型が破損し難いトロイダル状のコア形状が多いです。
ここまで高圧プレスしても電磁鋼板の磁性材密度には及ばないので、磁束密度は低く留まります。よく中国や韓国有名メーカー品で図13:異形状(UUとかEEとかPQなど)コアもカタログ化され実際に存在しますが、金型が破損しないよう型材や構造で工夫するも耐久性に配慮してプレス圧力を幾分落して成形するので、必ずトロイダル形状の代表磁気特性には達せず、あくまで異形状を活用した図14:正味設計形状(ニアネットシェイプ)を優先します。
また、大型ダストコアは特殊大型プレス機(例:地下ピット一階、地上二階くらい)が必要であり、大型高周波リアクトル用単純形状のコアくらいであまり製造されません。この密度差からダストコアは同形状のギャップ付電磁鋼板と重量を比較すると軽量です。
2. ギャップ付電磁鋼板コア(SHT)の活用設計
電磁鋼板コアのギャップ寸法は任意に加工設定ができるので、ダストコアに比べコア総合ギャップを小さめに設定してコアの飽和磁束密度を低下させながら、実効透磁率を高めに設計しています。
例えばダストコアµ:60*1に対し、80*1程度にすることでより少ないコイル巻き数で同じL値を確保することができます。これにより電磁鋼板コアは、コアの小型化や発熱抑制(コイルの少巻き化や、銅線細径への見直し)などへ利用しています。ダストコアチョークコイルに比べて外形寸法が少し小さいとか、巻数が少なかったりするのはこのためです。しかし重量はコアが重いのでチョークコイル形状が小さい割にはあまり軽くはなりません。このダストコアとの絶対重量の差は、設計の狙い毎に異なるので一概には決まりません。
*1 分かりやすくするために単位は、図5:国際MKS系を用いずCGS電磁系で説明しています。