【第3回】小型高精度カレントトランス”GEO MACK”EI-16Hの技術解説
第2回からの続きになります。
他の方式との比較
カレントトランス方式とは異なる入力交流電流検出方式について、他の方式との比較を示す。
(1)他の方式1として、シャント抵抗を商用電源整流後の直流回路に挿入して、オペアンプと直流絶縁機能付きマイコンにて実効値を測定してインバータ制御に用い、同時に1次交流電流値を理想サイン波形としてマイコン演算にて求め、電源ブレーカの電流容量限度設計を行う方式がある。既存回路を流用し低コストで成立するものの、総合した交流電流の出力電圧精度は±3%~±4%程度になる。
(2)他の方式2として、方式1と同様にシャント抵抗を直流側に挿入し両端電圧を、フォトカプラを用いて絶縁機能を付加し直流実効値を直読する方式がある。オペアンプやマイコンを用いないので比較的安価で構成できるが、数ボルト程度の電圧が必要となり、シャント抵抗値が高くなり損失が増加する。抵抗の精度によるが、出力電圧精度は±2%~3%程度に留まる。
(3)他の方式3として、ホール素子を内蔵したDC-CTを商用電源整流後の直流回路に挿入して、オペアンプと直流絶縁機能付きマイコンにて実効値を測定してインバータ制御に用い、同時にサイン波である1次交流電流値をマイコン演算にて求め、電源ブレーカの電流容量限度設計を行う方式がある。ホール素子を用いるため損失は大幅に抑制できる利点があるが、ホール素子自身の出力実効値許容差が±1%~1.5%あるため、サイン波演算電流値の総合出力電圧精度は±3.5%~4.5%で一般的なものである。
(4)他の方式4として、最近では直流回路に挿入した電流ICのみで直接出力電圧を得る方法がある。IC内にホール素子を内蔵して実効値を測定し内蔵アンプを用いて出力する方法で±2.5%~5.0%程度のものがラインナップされている。この方式はセット実装にてノイズの影響を受けやすいといった弱点も見受けられる。
このように他の方式は総じてインバータ回路を制御するためにシャント抵抗やホール素子を用いて直流電流の実効値を検出し、マイコンにて交流入力電流を理想サイン波形として演算にて求め電源ブレーカ15Aや20Aといった電流容量に応じた交流電流値を設定するもので、いずれも交流値に置き換えた出力電圧精度は±2.5%~5%に留まる。また、ここまでは電源高調波歪電流には言及しなかったが、現実的にはヒートポンプ式のインバータ回路は各種方式で違いはあるものの、何等か理想サイン波形とは異なる歪サイン波形を直流値から想定する必要があり、マイコン演算方式では少し余裕を持ったブレーカ電流設定が必要となる。この点において当社の入力交流電流を直読し±0.5%の高精度で検出するカレントトランスとは異なるものである。