2023.12.07

【第2回】小型軽量電源トランス “GEO MACK” GMKトランスの技術解説

全3回にわたり弊社技術ブランド”GEO MACK”製品の小型軽量電源トランス GMKトランスについて、連載をさせて頂きます。

前回の記事はこちら

GMKトランスの技術

NCWトランスの構成は、磁気特性が優れた方向性電磁鋼板(以下、GO材)を用いた巻き鉄心【写真3】2セットの最終形状コアを焼鈍済みで用意し、コイル用ボビンはPBTやPET樹脂等で概長方形環状とし、断面形状は概船底型で、外形状は疑似半円形状とし、内形状は整列巻きが容易な直線基調の任意断面形状にしてある。

これに1次と2次コイルおよび絶縁を施し、コイルの対向軸にそれぞれ前述の焼鈍済みコア2セットを、個々に専用巻き取り機設備【写真4】を用いて、コアを概真円を保ったまま大輪径状とし、コア内先端部をボビン孔溝に掛止固定した後、応力を抑制しつつ小径へ戻ろうとする復元力を利用しコイル小径へと巻き取り、コア終端部を溶接固定して電源トランスが構成出来るとされている。

【図1】に断面図(垂直カット)を示す。 原理的に唸り振動音を低減抑制するのは、コアが簡素なギャップレスコア構造で、且つ2セットで広い断面積と短い磁路長をもたらすので軽減された磁束密度が効果を発揮している。

NCWトランスの欠点は、コイル形成と絶縁に専用形状樹脂ボビンを用いるので、寸法精度から完全整列巻きに向かず高密度高占積率コイル製作が困難で熱伝導性も悪い。またボビンによりコアの巻き径が共に増すことも薄型小型化を阻害し大径化して重量も増加してしまう。 また容量毎に選択する標準サイズボビンは、多品種少量で専用設計の機会が多い電源トランスは少なからず大型化方向に制約を受けるし、整列巻き線を困難にする。 対して小型、整列化へ向けた専用設計ボビンを用意するには成形用金型の製作費用が嵩み、コア材使用量増加と合わせトランスの好適価格化は望めなくなる。

 

GMKトランスはこれらを解消して、小型薄型で軽量化を図り、任意設計性を高めつつ好適な価格化へと大幅な改良を図った。 先ず、樹脂断面厚が大きい成形ボビンのコイル径に従うGO材コアの大型化を回避し、高密度化する成形ボビンレスコイル構造へ、独自の専用巻き線治具を用いて巻き崩れしない、概正6角形断面コイルで完全整列巻き線コイルを実現。 次にその巻き線に直接絶縁シート始端部を固定し、隙間なく安全絶縁厚を確保しつつ張力を加え複数回巻き回し、これにシート終端部に直接、コアの始端一部を掛止し、応力を抑制しつつ同一方向の締め付け張力をもって隙間なく巻き取り、終端を溶接固定して高密度のコアを形成する。 これらにより成型ボビンを用いずコイルが小径で仕上がり、これに従うコア外形の小径化により、薄型化と同時に比重の大きいコア使用量が2セット分削減できるので、高密度化と同時に大幅な軽量化が図れる。また成形ボビンを用いないボビンレス構造なので、割れや欠け等の絶縁品質に不安をもたらすボビンへのコア挿入篏合工程が無く、また標準サイズのボビンの制約も無く任意の専用設計ができ、高額なボビン成型金型が不要となる。好適価格化へはコイルやコアの小径化に関わる銅線やコア材料の削減、およびボビンレス化で成形樹脂材が絶縁シート化すること、等が有効であることは言うまでもない。