2023.11.01

(その3) 自己紹介

    前回の記事はこちら

     

    【私の技術習得への具体活動】

    具体的には磁性材料を、事業の主体であった「電源トランス」に用いられる電磁鋼板材コアから新たに高周波用フェライトコア材に変え、先輩が高周波スイッチング式電源に適合する「スイッチング電源トランス」を、私は平滑用「チョークコイル」やスイッチングノイズ低減に用いるLCパッシブ式「ノイズフィルタ」を担当。その開発設計からサンプル製作および回路実装実験検討し、材料選択と専用部品設計、製品化へ設備と組立工法を図面化して、手配・量産引継を行うといった、インダクタ部品の開発設計に関わる技術業務の全プロセスである。

    まず大変苦労したのは、従来方式とまったく異なる「スイッチング式電源」の原理とその構成される回路と動作を指南頂きながら実動作観測で理解することから始まり、そこからノイズを捉えるためにどの素子、回路からどのような波形で発生か、その伝導ルートの探索と誤動作モードによる障害現象は何か、その測定方法と電源装置の法規制値は、また適用される安全規格は等々、具体設計開始に至るまでの勉学と情報入手、実験計測に勤しんだことである。

    また、動作を実践で理解するにも今のような専門書や検索システム、使い勝手の良い計測器類、およびPCを用いた各種シミュレータ類も無い中で、渦電流損失や表皮効果・近接効果などの高周波動作現象やその計測評価法も分からず、まだ途に就いたばかりの高周波技術の把握へ周辺から都度指導してもらいつつ試行錯誤しながら実験した。当時では最新計測機器のマニュアル式トリガー波形メモリ付オシロスコープや、FFT解析するスペクトラムアナライザー、Z-θ式LCRアナライザ等を駆使して、試作と評価を繰り返し行ったことを思い出す。

     

    【1970年代 周辺技術と、材料工法環境の変化】

    特に電磁シールドルームにて規格に適合した専用台と疑似電源回路網、雑音測定専用レシーバやアンテナを用いた雑音端子電圧や不要輻射雑音測定には計測要領やアーシングノウハウ等の計測再現性を確保するまでには経験の積み重ねが必要で、かなりの時間を費やした。

    この頃に電気用品取締法(1999年/平成十一年より電気用品安全法)が分野別企業で構成される各工業会の要請を受けて技術進化に沿うよう盛んに見直しがされ、共通技術として絶縁材料は紙を樹脂含浸したものからプラスチック材料へ、その材質も熱硬化性フェノール樹脂や、結晶性の熱可塑性ナイロン(ポリアミド)樹脂から、高耐熱で生産性に富む熱可塑結晶性のエンプラPBT、PET樹脂へ、また紙フェノールプリント配線板はガラスエポキシ・コンポジット基板へと、小型・軽量化へ対応するために高耐熱化や機械強度・耐湿特性を確保しつつ加工性に富む改良されたプラスチック材料へと置き換えが始まった。

    配線接続方法も電気的機械的信頼性を確保するため、はんだ付け中心から圧着端子方式やコネクタ方式へ、一部はワイヤーラッピング接続へと変革が進んだことなどが記憶にある。